ままごと料理

11月3日、親子遊び合戦。子供チームと親チームがポラン杯を賭けて勝敗を競った。戦う種目は、うずまきジャンケン、お助けマン、王様ドッヂなど。総勢70人ほどが、穏やかな秋の日差しの下でポラン流の運動会を楽しんだ。去年に続いて今年も他の恒例行事のいくつかをコロナのために中止してきたが、いいタイミングでコロナが下火になってくれたので、控えめながらこの行事は実施することができた。28回目の決戦の結果は子供チームの勝利。通算戦績は14勝10敗4分けで子供チームが差を広げた。来年は何も気兼ねすることなく楽しく戦いたいものだ。

懐中電灯とエンピツ削り器でカマキリとトカゲを囲う
懐中電灯とエンピツ削り器でカマキリとトカゲを囲う。なぜか逃げ出さない。不思議。
カワムツ
10月の、こんな浅い流れの中で15㎝ほどのカワムツが獲れた。

ノーベル賞に思う

ノーベル物理学賞の真鍋淑郎さんが話していた。「私のような好奇心に支えられた研究が減り、効率や実利ばかりを追うものが増えた」と。同じことをここ数年の日本のノーベル賞受賞者が異口同音に憂えている。問題は国のお金の使い方である。結果が早く出る研究や実利に直結する、つまり金もうけにつながる研究を優遇し、そうでないものや、時の政府に批判的な学者を冷遇したりするような、近視眼的で狭量なやり方が問題なのだ。将来、日本人からノーベル賞は出ないという声もある。今回、新型ウイルスのワクチンが日本で開発できなかった理由にもそんなことが影響しているという指摘がある。過去の、もっと懐の深い政府の時代に育った研究者や、真鍋さんのように日本から流出していった科学者たちの声に国は耳を傾けてほしいものだ。

真鍋さんは自分の研究を支えているものとして好奇心を真っ先に挙げた。それは愛媛県の山奥で山や川に囲まれて育ったことと関係があるようだ。真鍋さんの研究分野と関係のある雨や雪や風や霧や虹はもちろんのこと、昆虫や小動物、草花など、自然界には子どもたちの好奇心を刺激するものがあふれている。そして幼い時の自然体験は想像以上に印象的に深く心の奥に刻まれる。その自然の中で心を動かされた体験が人間活動を陰で支えているのは自然科学の分野だけではない。美術や音楽、文学や哲学の世界でも創造力の源になり、着想や思索のヒントにもなっている。スタジオジブリの宮崎駿氏は助手の若いアニメーターたちについて「手の中の魚がビクビクッと身を震わせる場面を活き活きと描けなくなっている。それはそういう体験がないからだ」と言う。あるいは音楽の世界では、夜空の星座を五線譜の上に並べてメロディのモチーフにした曲がある。ピアノやハープが奏でる曲はなかなか美しくて癒される。そういう発想も素敵だ。

さて、ポランが小学校からちょっと遠い山すそにあるのは子供たちに自然の中で過ごしてもらいたいからだ。生き物と出会い、木々や草花で遊び、森の香りや秋の夕闇に包まれて、一日の数時間を過ごしてほしいと願っているからだ。わざわざ網を持って校外学習に出なくても昆虫や魚が身近にいる。イシガメ、トノサマガエル、大きなモクズガニに目を輝かせる「生き物大好き少年」も、少数ながらまだ健在だ。今や希少な存在になったオケラも姿を見る。2,3センチほどの愛くるしいその生き物は、手の中に入れると、指の間に潜り込もうとして押し広げるので痛くはないがくすぐったい。土をかぶせてやるとモゾモゾと掘り進む。不思議なその生き物は出合うといつも子供たちを楽しませてくれる。ヒバカリというヘビの幼い個体は、無毒だと教えてやると安心して手やポケットの中に入れていつまでも持ち歩く子がいる。その一方、虫嫌いな子は確実に増えている。小さな蛾を見ただけでキモイキモイと大騒ぎをする。人間と同じこの星に生まれてただひたむきに生きているだけの小動物たちをそこまで嫌悪しなくても・・・と言いたくなる。ちょっと勇気を出して見つめてみれば意外な発見があり、大事な宝の体験になるかもしれない。自然を遠ざけることは自分の生き方の幅や可能性を狭くすることになる。 レイチェル・カーソン(「沈黙の春」の著者)は書く。人間にとって最も豊かな学びは自然の中にある。そして、「感じる」ことは「知る」ことよりも何倍も大切だ、と。子供たちは今後ますますデジタルな情報に晒されて、「知る」ことばかり多い毎日を生きることになる。人間の脳は情報を処理しきれなくなると異常をきたす。イライラし、怒りっぽくなり、すぐに落ち込む。そうなる前に「感じて」立ち止まり、何が本当に大切なことなのかを「考える」ことができる、そんな人間になってほしいものだと、ポランの秋の冷気の中で思う。

見つめて生まれたまど・みちおの詩を二つ。

イナゴ

はっぱにとまった
イナゴの目に
一てん
もえている夕やけ

でも イナゴは
ぼくしか見ていないのだ
エンジンをかけたまま
いつでもにげられるしせいで…
ああ 強い生きものと
よわい生きもののあいだを
川のように流れる
イネのにおい!

ミミズ

ようふくは ちきゅうです
オーバーは うちゅうです
¦どちらも
いちまいきりですが