虹の橋

勝ったり負けたりするからいい

「ビーダマ、ビーダマ」、ランドセルを下すと先を争うようにビーダマ場へ駆けて行く一、二年生たち。今年の一年生もやっとビーダマ遊びの面白さが分かってきたようだ。7月からやっているというのに、ベーゴマの練習を優先するからなのか、それともビーダマ場が上級生に占有されるからなのか、一年生たちがビーダマに夢中になるのはいつも秋の気配が漂い始めた今頃だ。ベーゴマの練習を通じて拙かった指先がきたえられた結果、ビーダマも上手に弾けるようになったということかもしれない。とにかく今年も一年生たちのビーダマが今、活況を呈している。

ビーダマ場から聞こえてくる大きな声に魅かれてボクはついついビーダマ場へ足を向けてしまう。かなり上達していることは一目瞭然だ。感心して眺めていると一年生たちから挑戦状が突き付けられる。ホイホイと受けて立つのだが、うかうかしているとし一歩も二歩もリードを許してしまう。もちろん簡単に負けるわけにはいかないので、こちらは大人げも容赦もなく弾き飛ばしてやる。するとシュンとして泣きそうになる。ところがどっこい立ち直るのも早くて翌日もまた誘ってくる。強い相手と戦うことを面白いと感じる気持ちがすでに一年生に芽生えている。これがこの遊びの優れた点だ。仲間と切磋琢磨し、先輩や時に大人とも、毎日、勝った負けたと一喜一憂する。簡単にくじけない《しなやかな心》。《感情豊かな子に育つ》。こんな育児書にあるような抽象的なお題目のヒントがこのビーダマ遊びの中に具体的に見える。これから肌寒くなる頃まで、こんなに夢中になれることがある子供たちが何やらうらやましい。 ビー玉

さて、このビーダマ(「てんこ」という名前。天国と地獄に由来する?)の面白さは、ゴルフとビリヤードとサバイバルゲームを合わせたようなところにある。指先で玉を弾いてゴルフのように5つのホールを巡るのだが、その途中にある他のプレーヤーの玉をビリヤードのように当てるともう一度自分の番が続いたり、もちろん弾き飛ばしてもよい。そうやってホールアウトすれば殺し屋になる。つまりその子に当てられたビーダマはゲームオーバーとなる。だから少しでも相手に先んじて上がればそれだけ有利になる。他の子はその殺し屋から逃げながら自分も殺し屋になり、最後まで生き残ることを目指す。指先のコントロールが何より肝心だが、そこに《運》という不確定な要素が絡みこれが案外ゲームを左右する。時には緊張で指が震えるような状況も生まれるし、勝つためには微妙な駆け引きも必要になる。たかが子供の遊びとはいえ、大人さえも夢中にさせる奥の深さがある。

蛇足と思いながら書くのだが、一年生や二年生がみんな夢中というわけではない。宿題を優先する子もいる。そんな子が以前より増えた。ボクはそれをもったいないと正直に思うが、どんな子供時代を過ごすのがいいのか。それはその時代の親や社会が決めることであり、親の言いつけを守る子が増えたことも時代のもたらした変化である。ボクにできることは、古い時代に自分が子供として楽しかった遊びと、長い学童保育所の仕事を通じて出合った多くの子供たちが例外なく楽しんでくれた遊びを、目の前にいる現役の子供たちにも提供することだ。そしてその見返りにボクが密かにもらっているのは《笑ったり泣いたり叫んだりする子供たちが発散する活力のシャワー》だ。この活力シャワー、ボクのような年寄にはもちろん、世の中の大人たちにとっても有用なものだと思う。幼き者、子供という不思議な生き物が存在する理由の一つがこんなところにもあると感じる。

ウイズコロナってこんなこと?

コロナウイルスに完全な終息はないような気がしている。少なくとももうコロナ前と同じ暮らし方には戻らないと思った方がいいのではないか。手洗い、マスク、リモート、換気、黙食、アクリル透明板、入場制限・・・そういうものに違和感を持たなくなること。それがウイズコロナ、アフタコロナということかもしれない。これまでも冬になればインフルエンザの予防接種を受け、感染すれば医者で検査をし注射を打ってもらって自宅で静養した。学級閉鎖だって普通にあった。少し昔は赤痢や日本脳炎もあった。麻疹、ノロウイルス、手足口病、デング熱、ジカ熱・・・、その時その時、必要な処置をして暮らして来たわけで、コロナに対してもマスコミの取り上げ方がもっとさりげなくなる、そんな時が来るのだろう。

そうなると本腰を入れて考えなければならないことがある。子供や学生たちは楽しい行事を減らされ、制限される一方である。このままでいいとは思えない。何とか工夫して楽しみを復活させなければならない。マスクが原因のコミュニケーション能力の未発達の問題は今後、思いがけない現象として表面化するかもしれない。PCR検査はまったくの無償にする。エクモ(人工肺)などの治療機器を増やす。ワクチンや治療法の開発費などの予算を大幅に増やす。考えなければならないことは山ほどある。