竹を削って箸をつくる。膝の上にはケガ防止とズボンなどが傷まないためにタオルを置いている。見本が用意してあるのでそれを見ながら太さ加減を決める。先の方を少しずつ細くすることはとてもむずかしい。6年生でもできる子は少ない。
正月が過ぎてしばらくするとポランでは箸づくりが始まる。竹細工はよく乾燥した竹を使うのが常識だが、それだと硬すぎて特に一、二年生たちのやわらかな手には負えない。だからポランで使うのは藪から切り出したばかりのみずみずしい孟宗竹だ。削りやすいけれど、できた箸を放置しておくとカビが生えるという欠点もある。常に使うようにすればそれは防げる。
今、世の中の若い女の子たちの間でかぎ針による編み物が人気だそうだ。100円ショップの棚からは毛糸が消えているとか。帽子やマフラー、ちょっとしたポシェットなどを編むらしい。編み物の魅力についてテレビで女子高生が話していたところによると、自分だけの個性的なものができることに加えて、我を忘れて夢中になれることも楽しいという。中には、SNS見る時間が減ったけど、充実感があると答えている子もいた。
ポランの箸削りにも同じような魅力があると思う。四角い竹の角を削り落として次第に丸い棒にする作業をしていると無心になる。仕上げの段階に近づくと削りクズがだんだんと細かくてクルクルとしたものになり、慎重さが必要で手を抜けない。最も集中する段階だ。そのあたりは編み物よりハードルが高いかもしれない。何でも物を作り出すことには難しさの奥に難しいからこその楽しみがある。手編みには肩や首が凝ることがあるし、竹削りには指を切ったり、手が痛くなったりすることもある。何であれ楽しくなるまでには小さな苦労はつきものだ。若い子が無心になれることに出合っているのはとてもいいことだ。
竹島水族館にて
フィンランドは、国連が調査する《幸福度ランキング》で7年連続のトップだ(日本は50位あたり)。幸福度の基準となるのは、人生選択の自由さ、健康寿命、政府機関の腐敗の少なさ、一人当たりのGDP値などだ。子供たちの夏休みは2カ月半。その間、宿題はない。教育を通して子供たちに求められるものは、社会の中で役に立つ人間。本物の人間力のようでもある。人口が500万人ほどの小国なので、国民一人一人の人間力が高くないと国際社会の中でやっていけないというのがその理由だ。教育の質も、長い休暇も、女性の地位向上も、やり直しができる人生も、幸せな国民が幸せな国を作るということか。納得。